約 2,496,667 件
https://w.atwiki.jp/aniwotawiki/pages/49545.html
登録日:2021/10/13 (水曜日) 23 52 10 更新日:2024/01/18 Thu 22 45 36 所要時間:約 6 分で読めます ▽タグ一覧 アニメ ゼロの使い魔 ライトノベル ライトノベル、ゼロの使い魔は異世界転移系ファンタジーとして根強い人気を持つ。 主人公平賀才人とヒロインルイズのラブコメは、当時『ツンデレ』という新語を世に知らしめる大きな力となった。 しかし、それらとは別にゼロ魔の人気を支え続けたのが、ファンタジー世界に異色な地球の道具たちである。 科学という言葉すら存在しないファンタジー世界に地球の戦車や戦闘機を持ち込んで、中世の軍隊やドラゴンと戦ったらどうなるかという、青少年たちが厨二心で夢想する光景を実現した本作の描写は大きな反響を呼び、ゼロ魔世界では度々地球の有名な兵器が活躍する描写が描かれた。 主人公の平賀才人はルイズの使い魔として得たガンダールヴの能力で、どんな武器でも瞬時に理解して扱うことができるために、彼が地球の武器を扱って戦うシーンはどれも名場面としてファンの語り草になっている。 しかし、科学レベルが中世並みのハルケギニアでは部品や弾薬などの補給はできないために、その活躍は限定的なものにならざるを得なかったが、それでも有名な戦車や戦闘機が異世界で活躍するという描写は世の少年たちの心を熱くさせた。 なお、なぜ地球からハルケギニアに武器や兵器が召喚されるのかは、過去に始祖ブリミルが「あらゆる武器を使いこなせる使い魔であるガンダールヴ」のために異世界からその当時の最強の武器を召喚するという魔法がまだ生きているためで、過去には刀剣や槍などが召喚されていた。 一方でアニメ版ではその設定がないため、エロ本や水着といった武器とは関係ないものも召喚されている。 ある意味ではもっとも強力な兵器と言えるかもしれないが 本項ではこれらゼロ魔世界を彩った兵器たちを登場順に紹介する。 【原作に登場した兵器】 破壊の杖(M72 LAW 対戦車ロケットランチャー) 1巻に登場した初の地球の兵器。 携帯型の使い捨てロケットランチャーで、通常は短い筒の形で収納されているが、使用時には縮められている砲身をシャコンと引き出して、敵に向かってぶっ放つ。 才人が召喚される30年ほど前に魔法学院の近くに転移してきてしまったアメリカ兵が所有していた。 状況と年数から考えると、恐らくベトナム戦争時のどこか。 たまたま居合わせたオスマン学院長を襲っていたワイバーンをこれで撃破するが、負傷した状態で転移してきてしまったのか、彼はそのまま介護のかいなく死亡してしまう。 オスマン学院長は命の恩人の彼への敬意を込めて、使用済みのものを彼とともに埋葬し、もう一本所有していたものを「破壊の杖」と名付けて保管していた。 しかし、破壊の杖というたいそうな名前から高価な品物と誤解した盗賊フーケに強奪され、紆余曲折あって才人がフーケのゴーレムを相手に使用することになる。 この時のゴーレムは才人たちの身長から推測して6、7メートルはある巨体だったが、粉々に粉砕された。 これによって、魔法の世界でも地球の技術が通用することが明らかになり、二次創作では様々なものに置き換えられて話が作られた。 前述通り、使い捨ての兵器であるため筒だけになった後はオスマン学院長に返還された。 竜の羽衣(零式艦上戦闘機) 3巻から登場。言わずと知れた日本人なら誰でも知っている代表的なWW2戦闘機。 アニメでは特徴から恐らく52型。原作では型式不明。 シエスタの曽祖父である佐々木海軍中尉が搭乗したままタルブ村の上空に迷い込み、燃料切れで不時着後に保管されていた。 保管のためにはタルブ村に根を下ろした佐々木中尉が働いて得た私財を使って「固定化」の魔法がかけられており、半世紀経った現代でも経年劣化は起こしていない。 村人には奇妙なものとしか認識されていなかったが、シエスタから話を聞いた才人によって発見された後は学院に移送される。 燃料切れの状態であったため、コルベール先生が石炭を錬金してガソリンを精製。数日でタル5つ分のガソリンを作ってもらい、これを使ってアルビオンの艦隊に立ち向かった。 アニメ版では一晩で大きめのタルで4つ分、タルの大きさから推測して約2000リットルを製作している。 ちなみに軽自動車のガソリン容量は約30ℓ以下、普通自動車でも約60ℓ以下であることを考えると、2000ℓのガソリンを手作りするというエネルギー事情を一変させかねないとんでもないことをサラっとやっている なお、零戦の燃料搭載量は増槽を別にしても550リットルほど。土のメイジが100人いたら空母機動部隊の燃料をまかなえてしまう。 アルビオンの竜騎士を相手にした空戦ではまさに無双状態。竜をはるかにしのぐ機動力と、7.7ミリと20ミリ機銃という武装の差で竜騎士をほぼ全滅に追い込んだ。 ただ、ガンダールヴの力は武器の使い方はわかってもコツはわからないため、特にアニメ版では才人は本職のパイロットなら絶対やらないであろう機銃の握りっぱなしをおこなって弾薬を無駄遣いしてしまったことが後に響くことになる。(零戦乗りたちは弾薬を節約するため、敵を撃つ一瞬しか銃撃しなかった) だがさすがに戦艦には機銃では通用せず窮地に陥ったが、ルイズが虚無の系統に目覚めたことによるエクスプロージョンの発動で難を逃れた。 以後は機銃弾の補充が不可能なため、移動や偵察のために使われた。 アニメ版では作画にメチャメチャ気合が入っており、コクピット内の精密な描写はミリオタも一見の価値あるものとなっている。 タイガー戦車 13巻から登場。こちらも言わずと知れた世界最強と呼ばれたWW2の重戦車。 作中では単にタイガー戦車としか呼ばれないが、挿絵を見る限りではキングタイガーのほう。 ロマリアの地下墓地に保管され、初めて『場違いな工芸品』としてジュリオから才人に、これはガンダールヴの使う『槍』であるから才人が使うべきものだとして与えられる。 しかし重量が半端ではないため、輸送するだけでもメイジ複数でやっとというドイツ軍も泣かされた欠点にいきなり苦しめられる。 実戦には才人ひとりでは扱えないため、コルベールとキュルケとタバサを乗員にして出撃。なお装填手はタバサ、無茶させんな。 相手どるのはガリア軍の新兵器である身長25メイルにもなるゴーレム「ヨルムンガント」(参考までに、ガンダムは17メートル) ヨルムンガントはそれまでにも迎え撃ったロマリア軍を壊滅させ、ルイズのエクスプロージョンも跳ね返すほどの装甲も持っていたが、そこは伝説のアハトアハトこと88ミリ砲の威力は別格で、距離2000ほどからも軽々と撃破していく。 このときに才人が発した言葉が、「地球なめんなファンタジー」である。 このシーンではヨルムンガントの放った砲弾を装甲ではじき返すシーンもあり、まさにタイガー戦車がかつて連合軍を相手に伝説を作り出した無敵神話の再現となっている。 ちなみにこちらも固定化の魔法で保護されているので経年劣化に蝕まれていない。それどころか、キングタイガーの弱点であった足回りの脆さによる故障率の高さも解消されているらしく、全速走行で戦場まで急行してそのまま大暴れという真似を可能にしている。 もし固定化が施されていなければ、戦場までの間で故障して使い物にならなくなった可能性も高いので、その点では「ファンタジーなめんな地球」でもある。 砲塔はその後に取り外されてオストラント号に搭載された。 原子力潜水艦 聖地の海底に沈んでいたロシアのものと思われる原潜。 かなりの時間放置されていたらしく朽ち果てていて、ミサイルも発射不能にこそなっていたが、核弾頭だけは無事だったことから……。 【アニメ版にのみ登場した兵器】 大いなる槍(アハト・アハト) アニメ3期最終回で登場。タイガー戦車の主砲である88ミリ砲のオリジナルである高射砲である。 タイガー戦車がアニメ版では登場しないので、その代替として登場。 残念ではあるが、戦車をアニメで動かすための労力はものすごく、後年にガールズ パンツァーでも相当な苦労の逸話があるくらいだから仕方がない。 原作同様にヨルムンガンドに向けて放ったが、ヨルムンガントを守っているカウンターの魔法が強力すぎて一発目は失敗。 二発目は仲間たちが足止めしているところにルイズのディスペルの魔法をかけることによって貫通に成功した。 F2戦闘機 アニメ4期最終回で登場。航空自衛隊の所有する主力戦闘機。 地球に送り返された才人が、エンシェントドラゴンの脅威にさらされているハルケギニアを救うために自衛隊基地から持ち出した。 だが、どんな手を使って持ち出したかは不明。少なくとも自衛隊基地に侵入して燃料兵装フル状態で発進可能な機体を強奪する(*1)なんて真似が人目に触れずにできるとは思い難く、日本中がひっくり返るような大事件になったのは想像に難くない。 そのため、その後地球に戻ってきた才人とルイズの行く末を心配する声がファンの間からあがっている。 経緯はともかく強奪後は日食を通ってハルケギニアに無事帰還。 対艦ミサイルを発射してエンシェントドラゴンに多大なダメージを与え、最後は才人が直前で脱出した上での自爆で致命傷を与えた上でのルイズのエクスプロージョンで倒した。 才人「次回、ゼロの使い魔・追記修正」 ルイズ「次回も私に会いたいなら、おとなしく待ってなさい」 △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 [部分編集] 項目内でも触れられてるけど、ルイズの召喚と破壊の杖は置き換え二次創作には本当に打ってつけの設定だったなと見ていて思った。(大抵はクロス先キャラに所縁の重要アイテムが破壊の杖と置き換わる) -- 名無しさん (2021-10-14 05 47 30) 実際には使われてないとはいえ聖地にあったあれは書かれないのか… -- 名無しさん (2021-10-14 11 56 27) 何でアニメでタイガー戦車出なかったんだと思ったら、作画コストかー……。 -- 名無しさん (2021-10-14 16 33 35) フル装備のF2持ってかれた挙句にロスト…何人の首と金が飛んだ事やら -- 名無しさん (2021-10-14 18 34 50) 地球ナメんな。ファンタジー -- 名無しさん (2021-10-14 18 45 22) 固定化魔法便利すぎる -- 名無しさん (2021-10-14 20 12 56) ぶっちゃけゼロ魔f最終回、平賀家ヤバイ状況だと思う。 -- 名無しさん (2021-10-14 21 28 30) というより平賀家の設定不明だからな、パソコン好きの平凡な高校生ではあるんだろうけど -- 名無しさん (2021-10-15 07 53 37) ↑原作でも行方不明の息子を心配してるお母さんがいる事以外は謎だな -- 名無しさん (2021-10-15 19 23 06) ↑4固定化と練金はゼロ魔の二大チート魔法だって昔から言われてたからなあ -- 名無しさん (2021-10-27 10 40 33) どーでもいいけど、ハルケギニアの科学文明は描写見る限りでは中世じゃなく近世くらいのレベルはあると思うぞ。平民のシエスタが娯楽小説読んでることから見てたぶん活版印刷技術はあるし、眼鏡もあるし、懐中時計もあるし -- 名無しさん (2021-12-29 14 46 07) ガソリン高の現代にこそ錬金の魔法がほしい -- 名無しさん (2022-04-19 21 26 55) ロマリアの地下はガルパンの秋山殿が垂涎なほど世界各国の戦車博物館になってるんだろうな -- 名無しさん (2023-08-12 07 48 42) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/sekaihoukairpg/pages/35.html
フラックス・アシッド(Flux Acid) 【由来】flux(流転、融剤、溶剤)、acid(酸) 【題材】万物流転、日本人の高い協調性のデメリット、過去との対話、トラウマの直視、酸性雨、環境破壊 【様相】男、20歳、身長174㎝、翡翠色の瞳、黒髪、キリッとした端正な顔立ち、目は細め、芥川龍之介または長谷川博己さんのような雰囲気 【技能】妖刀「玉虫」、超能力「融解」 【性質】勤勉で潔癖症。殺人を犯した父グリムのことを憎みつつも、優しかった昔の父のことが常に脳裏にあった。夢中病の父を治す方法を探すため、ペリクル大学医学部へ進学する。 虹色の刃紋 刃紋のイメージ
https://w.atwiki.jp/bno-item/pages/94.html
種別:下着 EP:0 防御力:0 解説: 「LUNA」の女性用下着。黒のほっそりとしたデザインが、体のラインを際立たせる。
https://w.atwiki.jp/wolfpedia/pages/134.html
マイミスライムスレによく出没する舞美顔の珍獣。泣き声は「がぁ♪」だがめったに鳴かない。 恐らく舞美がかつて保険会社のアフラックのCMに出演したことに由来していると思われる。 (`ヾ""´) `(*・ゥ・) o(o,,uu 2009-03-17 02 22 11 (Tue)編集 タグ AA 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/mekong/pages/234.html
gap-filling
https://w.atwiki.jp/takoyakidon/pages/43.html
トレードで出せるもの 聖属性 アカネ 4 ウラヌス 2 ウルド 4 サジタリウス 5 サリエル 7 サンダースピリット 5 サンダーバード 5 シヴァ 1 HR シルキー 1 シルフ 3 ソング・パーン 2 ハトホル 5 ビーストテイマー 1 HR Lv31 白狐・アカネ 1 プリティエルフ 2 プリティピクシー 2 プリティフェアリー 2 ミカエル 2 HR 人 人属性 インフィニティ4 オデュッセウス1 SR Lv22 クラウン1 シャーマン1 セクシーダンサー 3 セクシーダンサー 1 大進化 ソードダンサー1 ニンジャ3 ニンジャ++1 Lv25 ネクロマンサー5 ハイウィッチ3 ハイプリースト1 パラディン2 ブライドプリンセス 1 ベディヴィア1 ホーリーナイト1 ホワイトナイト1 マスターダンサー 1 HR 聖 魔属性 アエロー5 ヴァンパイアガール 2 ヴァンパイアレディ 1 オルトロス1 大進化 Lv27 オルトロス1 ガウェイン2 ケライノー1 HR サキュバス3 サロメ1 ジャックフロスト 4 タナトス4 ドラゴン6 ナーガ1 ナイトメア2 ニーズホッグ2 HR フェンリル1 モーガン2 リヴァイアサン1 HR リッチ1 リリム1 リリム1 MAX合成大進化 Lv30 魔 その他コメント欄 欲しいものはヴァンパイアプリンセス!! -- フルフラット (2012-10-03 11 45 13) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/maid_kikaku/pages/984.html
(投稿者:神父) 「“どの戦死者も同じに見えてきたら”」 歩兵小隊長、ヨアヒム・ランケ少尉は夜営の焚き火に、貴重なブランデーを注いだ金属製のマグをかざした。 「“潮時だ”……なるほど、それに乾杯と行こう」 マグの側面に刻み付けられた文字を読み終え、アルコールを一息にあおる。 火のついたガソリンをぶちまけられたかのように胃の中が焼灼された。 空になったマグをもう一度眺める。それは、彼の部下の誰かが持っていたはずの遺品だった。 今までに誰が死んだのか、彼はもはや完全には把握できていなかった。補充と戦死のサイクルが早すぎるのだ。 遅かれ早かれ死ぬんだから顔も名前も知らない方がいい、自分だって同じ事だ、と彼は考えるようになっていた。 無論そんな事を言えば除隊させられ、顔のない部下たちの亡霊に悩まされながら人生の残りを送る事になる事は間違いない。 最終的な解決策は死ぬ事だけだ―――しかし、彼は部下の命という責任を負わされていた。 「不潔」 いつの間にそこにいたのか、彼の背後に一人のMAIDが立っていた。 グロースヴァントの夜は冷えるというのに、露出度の高い奇怪な格好をしている。 ……とはいえ、軍服を着ている身分からすれば、奇怪さはどのMAIDもさして変わらないが。 比較的ましな状態の足場を選んで歩いてきたのだろう、彼女は彼と比べればまったくきれいなものだった。 「潔癖症で歩兵が務まるものか。火の中も泥の中も同じように歩いて行軍するのがおれたちの仕事だ」 「……理解できません」 「ふん、人でなしからすりゃそんなもんだろうよ。あんた、この戦区を担当していたMAIDかい」 「まあ、そんなところですけど」 「そうか。で、何しに来た」 「あなたに渡すものがあって」 そのMAIDが腰に束ねられた丸鋸の刃を手に取るのを目にした瞬間、ヨアヒムの呼吸が詰まった。 肺を叱咤するほどの時間もなかった―――彼女が丸鋸を彼の喉に叩き込んだのだ。 衝撃が先に訪れ、痛みがやってくるよりも先に意識の圧力が下がり始めた。 彼は黒々とした空を見上げる形で倒れ、大量の血が気管を満たした。 「……」 MAIDが踵を返した。一撃で致命傷を与えた事を確信し、恐らくは次の犠牲者を探しているのだろう。 彼は飲み下せない血液を最後の知覚で味わいながら、急速に黒ずんでゆく視界に入ったその後姿を見つめた。 できる事ならば、その背中に向かって声をかけたかった。大声で叫びたかった。 そうすれば、どれほど感謝しているか教えてやれるのに。 春とはいえ、グロースヴァントの尾根付近ともなれば高高度のために気温は下がる。夜間は氷点を下回る事も当たり前だ。 重症を負い、手当も何もなしで放置されていれば死に直結する―――人間であればの話だが。 イェリコは墜落からおよそ八時間で意識を回復し、ジャケットの表面に凍りついた血液を音高く割り落としながら身を起こした。 「くそ……まったく運が悪い。88mm高射砲(アハトアハト)の直撃を受けるとは」 無意識の内に頭を庇ったのが功を奏したのだろう、記憶の混濁もなく、比較的明瞭に墜落前後の状況を思い出す事ができた。 脇腹で榴弾が炸裂した直後、追いかけるようにしてあの独特の発射音が聞こえたのだ。 88mmなどという大型弾が直撃すればMAIDとて無事では済まない……右半身に鋭い痛みが走り、イェリコは顔をしかめた。 右腕がこわばり、上手く動かない。左腕で苦労して角型の懐中電灯を腰から外し、自らの状態を点検する。 脇腹にも腕にも無数の金属片が突き刺さり、ジャケットをずたずたにしていた。これが人間であれば胴体が泣き別れどころの騒ぎではなかったろう。 背中の義翼がまるで使い物にならない状態にある事は首を回さずとも理解できた。そうでなければ墜落などしたはずがないからだ。 ぺたぺたと首周りから顔にかけてを触ってみる。肩の陰に入っていたおかげか、目立った外傷はなさそうだ。 さて下半身はと言うと――― 右脚がなくなっていた。 無論、右脚は義足である。しかし、片脚がないという事はすなわち歩く事すらままならないという事だ。 榴弾の衝撃で膝の取り付け部から落下したのだろう。近くに落ちているはずだ……いや、むしろ彼女は近くに落ちている事を祈っていた。 このグロースヴァントの山中、しかも南側の斜面―――人間がいる場所にたどり着くためには、この山地を這い登っていかなければならない。 泥の上を滑り降りていくだけならばいくらでも方法はある。実際、ドラゴン・フライに叩き落とされた後にそうやって司令部に帰還した事もあった。 しかし片脚のない状態で、しかも大多数を撃滅したとはいえGの勢力圏内から脱出するとなると相当な困難が伴う。 彼女はまたしても―――もう数える事すらやめてしまったが―――死地に置かれていた。 「……」 そういえば、と電灯の黄ばんだ光を周囲に向ける。機関砲はどこへ行った? 本来ならばGに気付かれる危険性を避けるために灯火は抑えるべきなのだが、彼女にそれほどの余裕はない。 そもそも、半日近くも血のにおいを撒き散らして寝ていたのに襲われなかったのだから、今更警戒も何もあったものではなかった。 霜の降りた地面にはいくつかの保弾板と弾薬箱が転がっていたが、砲そのものは見当たらない。 遠くに落ちたか―――といささか狼狽しつつ空を見上げると、月明かりに照らされた樹冠の中に見慣れたシルエットが紛れ込んでいた。 「……あれが今足元にない不運を嘆くべきか、寝ている私の上に落ちて来なかった幸運を喜ぶべきか……」 本体重量のみで実に273kgに達するFlaK18高射機関砲は、彼女の頭上15mほどにある木の枝に引っかかっていた。 あまり明るいとは言えない懐中電灯で照らしつつよくよく確認してみると、幹を割るようにしてがっちりと嵌っている。 ちょっとやそっとでは落ちてこないだろう。 イェリコは嘆息し、夜の間は機関砲は放置して傷の応急手当に専心する事に決めた。 あまりにも多くの傷を負ってきたために神経が麻痺しているが、彼女が負っていたのは長時間放置していてよい類の傷ではなかった。 軍事正常化委員会―――いわゆる黒旗の一隊が、イェリコの墜落した周囲3kmほどに展開する歩兵部隊を無力化していた。 それと同時に装備品を可能な限り奪取し、戦力の拡充を図る。 アルトメリア支部の結成以降支援は行われているが、正規軍も満足に補給が受けられない現状、彼らに充分な武器弾薬があろうはずもなかった。 イェリコを撃墜した88mm高射砲は虎の子であり、しかも正規軍の注意を引かないために捨て置いて撤収する必要があった。 即座に撤収する必要がなければそのまま接近してコアを回収する事もできたのだが、正規軍もそれほど鈍重ではない。下手な動きをすれば爆撃されかねない。 「……こちらロナ、捜索を開始します」 もう間もなく夜が明ける。正規軍から奪ったケッテンクラートの車上で通信機にささやきかけ、夜通しアイドリングさせていたエンジンの回転数を上げる。 下手にエンジンを止めればオイルが固まって再始動できなくなる可能性があった。 腰を浮かせ、ステアリングに体重をかけながらクラッチペダルを踏み込み、ギアを一速に入れる。 お世辞にも体格が良いとは言いがたい彼女にとって、着座姿勢でのクラッチ操作には無理があった。 ケッテンクラートが調子よく進み始めた事に安堵しつつ、彼女は後部座席に積み上げられたツィー・ファウストの山が崩れていない事を確認した。 ただのMAIDが相手ならば―――命中までに数発を使う事を考慮に入れても―――当たれば一撃で片がつくだろう。 これほどの重装備で挑むのはあからさまなオーヴァーキルとしか言いようがない。 しかし相手は20回以上撃墜されてなお生還してきた化物なのだ。これくらいのハンディキャップがなければ、仕留めきれないかも知れなかった。 20回以上の被撃墜―――SS本部の記録によれば25回である―――の中には、幾度かの謀殺の企みも含まれていた。 黒旗がイェリコをつけ狙う理由は単純である。 彼女は彼らの信奉対象であるジークフリートのスコアを脅かし、その存在価値を地に落とさんとしているからだ。 付帯的に言えば彼女が「この世の理を歪める怪しげな」空戦MAIDであり、 また明らかに過剰な火力―――身長の二倍という大物を担いだMAIDはそうそういるものではない―――を持っているという事もあった。 いずれにせよ、彼女は黒旗にとって目の上の瘤とでも言うべき存在となっていた。 しかも、とロナは思い返しつつ歯噛みした。 「あの白黒女……まだ私たちの存在に気がついてないんですよね……」 何より腹立たしい事に、イェリコはすべての陰謀を単なる敵味方の誤認だと思い込み、「よくある事だ」の一言で片付けてしまったのだ。 存在すら気付かれないとは……敵視されるよりも、あるいは無視されるよりもなお始末が悪い。 そのためにイェリコは黒旗のブラックリストの中でもかなりの上位に位置していた。 「まあ、今度こそ死んでもらいますし、今までの分はそれで精算って事で」 スロットルを開くと、無限軌道は振動を増しながらも速度を上げた。 今度こそ彼らは目的を達するだろう―――少なくともロナや、その上官たちはそう考えている。 彼女を含む一個中隊規模の装甲擲弾兵がイェリコを包囲し、圧殺せんと前進を開始していた。 それは、たった一人のMAIDを相手取るには過剰なほどの大戦力だった。 SirenenGeheul BACK NEXT
https://w.atwiki.jp/aniwotawiki/pages/49561.html
登録日:2021/10/16 (土) 21 07 00 更新日:2022/08/29 Mon 23 45 06 所要時間:約 4 分で読めます ▽タグ一覧 Hs129 ドイツ ヘンシェル 兵器 変態機 攻撃機 空飛ぶ缶切り 第二次世界大戦 航空機 ヘンシェル Hs129とは、第二次世界大戦時にドイツが開発した対地攻撃機。 当時の機体としては破格の装甲と攻撃力を誇り、上空から戦車の砲塔を吹っ飛ばす様から”空飛ぶ缶切り”の異名で呼ばれていた。 重装甲 高火力という後のA-10神にも通ずる機体特性を持つ名機(?)となっている。 性能諸元(B-1型) 全長: 9.75 m 全幅: 14.20 m 全高: 3.25 m 翼面積: 28.9 m2 全備重量: 5,243 kg エンジン: ノーム・ローン.14M 空冷14気筒 700 hp × 2 最大速度: 407 km/h 航続距離: 880 km 乗員: 1名 武装 MG17 7.92mm機関銃 × 2 MG151 20mm機関砲 × 2 爆弾 250 kg パック兵装 MK101 30mm機関砲 × 1 BK3.7 37mm機関砲 × 1 BK7.5 75mm対戦車砲 × 1 開発経緯と特徴 第二次大戦当時、敵の戦車や塹壕を上空から攻撃するための攻撃機は各国で盛んに研究されていた。 ご多聞に漏れずナチスドイツでも主に対戦車用として着目され、開発が進められていた。 そして基本コンセプトとして"攻撃を物ともしないガチガチの重装甲、狙われにくい小型の機体、どんな敵も撃滅し得る火力"でオネシャス!とコンペをした結果、ヘンシェル社の設計案に白羽の矢が立った。 完成した機体は小型双発で安定性を確保しつつ各所に6~12mmの装甲を配し、武装は20mm機関砲を装備して戦車もイチコロとドイツ航空省からのオーダーに完璧に応えたものとなった。 加えて胴体下部にはオプションとしてパック兵装の装備が可能であり、攻撃力を増強することも出来る。 …しかしそんな都合のいい機体が簡単にできるわけがなく、諸々の問題点があった。 まず重装甲とした結果、総重量が5t超にもなってしまっている。 重装甲の機体を飛ばすには強力なエンジンが必要だが、本機に用意されたエンジン(*1)は465馬力。双発機なのでこれを二つ積んでいるが、合計しても1000馬力にも満たない物だった。 これは高性能なエンジンが他の優先度が高い機体に回された為だが、おかげで操縦性や運動性能は劣悪の一言だった。 かの魔王閣下の半身であるJu87Gも遅い重いと言われていたが、それでも「重量約2tで1000馬力級のJumo211Jエンジンを搭載した単発機」と書けばいかに鈍亀か想像がつくだろう。 オマケにテスト時にはなけなしの出力も十全に発揮出来ないというトホホな事態に陥った。 更にコックピット周りも装甲板で覆った結果「居住性?なにそれおいしいの?」と言わんばかりの極狭スペースになってしまった。 パイロットは操縦席にみつしりと詰め込まれ操縦菅を引くのも一苦労、更に風防には分厚い防弾ガラスが嵌め込まれ視界も悪い。 その上装甲を盛り過ぎてコックピット内に照準器や一部計器を配置するスペースもなくなり、外に直付けするというキ〇ガイ設計だった。 このためパイロットからは”空飛ぶ棺桶”と酷評され嫌われたらしい。 特にエンジンの馬力不足は致命的と判断され、本格的な量産にはストップがかかってしまう。 しかし既に戦争も始まっており、新しい機体を開発する時間もないためどうにかしてコイツを使えるようにしなければならなかった。 手っ取り早いのはエンジンの換装だがコイツに回すエンジンは無ぇ!…と思いきや、意外なところから救世主が現れる。 占領したフランスの工場でエンジンの生産ラインを接収した結果、700馬力のエンジンを調達することが可能になったのだ。 鈍重なのは相変わらずだが、どうにか使い物になるレベルになり量産・配備が進められることになった。 実戦での活躍 先ずアフリカ戦線に配備されたが、換装したフランス製エンジンが砂埃に弱かったので稼働率が悪く、戦果もパッとしなかったらしい。 其れでも、米国製のM4中戦車に対しては滅法強く、「英兵調理器」と綽名する程の猛威を見せつけた。 東部戦線に投入された機体はソ連相手に大暴れし、数多くの戦車を粉砕!玉砕!大喝采!した。 綽名である”空飛ぶ缶切り”もこの活躍でつけられたもの。 1943年におけるチタデレ作戦(クルスクの戦い)では、Hs129の一個中隊がソ連の戦車旅団を殲滅したとの記録もある。 だがしかし、他の項目でも解説されているように攻撃機が活躍できるのは味方が制空権を確保していることが前提条件となる。 活躍したクルスクの戦いも結局は負け戦になり、以降はじりじりと戦局が悪化していく中で本機の運用も制限されることになってしまった。 また重い機体を双発で飛ばすため燃料タンクが肥大化し、防御力の低下を招いたことも問題視された。 勿論タンクにも防弾装甲は施されているが、防御力には限度がある以上当たり判定は大きくなってしまい、対空砲火の餌食になることもままあった。 事態を重く見たドイツ航空省は代替機として陳腐化していたJu87を改造し対地攻撃用に転用した。これこそがJu87G”カノーネンフォーゲル“である。 ただ此方も2門搭載した37mmを左右同時発射しないとバランスを崩して墜落するわ、射撃の反動で後ろに飛んでくわの問題児だったので、完全な代替とはならず本機も継続して運用された。 まあ最終的に対地攻撃の主役はFw190になるんですけどね。 エンジン換装や武装強化プランも検討されていたが、元々開発の優先度が低い上にフランスが解放されエンジンの調達ができなくなったことも手伝い棚上げとなってしまう。 それでもパイロット達は数少なくなった機体を駆り、首都ベルリンに迫るソ連戦車隊を相手に終戦まで奮戦を続けたのだった… バリエーション Hs 129A-0 最初の試作機で競争試作に参加し合格した。 その後7機が完成し量産検討が進められたが、エンジンの馬力不足から量産はされなかった。 Hs 129B-0,B-1 B-0はエンジンをフランス製ノーム・ローン14Mに乗せ換え、各部を改修した型。 出力向上などで幾分かマシになりどうにか使えると判断され、B-1型として正式に量産されることになった。 Hs 129B-1/R2 固定武装の20mm機関砲では攻撃力がイマイチであったため、オプションとして開発されていた30mm機関砲を標準装備にした。 口径が1.5倍で貫通力は2倍、更にタングステン弾芯を使用した徹甲弾を用いて重戦車にも大ダメージを与えることが出来た。 Hs129B-2 B-1の細かな点を改良したタイプ。 パック兵装も改良され、Ju87Gと同型の37mm機関砲が装備可能となっている。 搭載数は1門だが、携行弾数は増加しており同軸射撃もしやすい。一発当たれば威力は十二分だし。 Hs 129B-3 ご立派様な75 mm対戦車砲を生やした仕様。 流石に少佐も大好きなアハトアハトには負けるが、パンターの主砲と同等と考えればその凄まじさがわかるだろう。(ちなみにチハたんのイチモツは57mm) 砲の重量は700 kgにもなり鈍重な運動性がさらに悪化したが、その破壊力は絶大でIS-2すら一撃で葬る威力があったらしい。 オプションとはいえ装備するには大がかりな改造が必要で、携行弾数はリボルバー式弾装で12発が限界だった。 その為か配備されたのは25機程度と少ない。 主なパイロット 本機を駆り戦果を上げたパイロットもちゃんといる。 フランツ・オスヴァルトは約300回の作戦飛行と50両の戦車撃破により騎士鉄十字章を受賞している。 尚、結構な頻度で撃墜や負傷をしているが、幸か不幸かその都度生還している。 また、対地攻撃の名手であるルドルフ=ハインツ・ルッファーは戦車80両撃破を誇るが、そのスコアはほぼHs129で上げている。 …二人共閣下に比べて撃破数が控えめ?いやこれでも相当なものなんですってば。 外部出演など どちらかと言えばマイナーな機体であるため、創作等で出てもモブ役が精々である。 ゲームの出演も多くないが、大抵は当たれば強いが鈍いというポジションになっている。 メガドラ版アドバンスド大戦略ではB-3は登場せず、B-1は装備が貧弱、B-2はゲーム全体として航空機の37mmの評価が抑え目なことから全体にぱっとしない機体。 なのだが、強力なAr234系列を使うためにはこの機体から進化させるしかないという、中々厳しい立ち位置にある。 立体物ではタミヤやハセガワでプラモ化されている。 最高峰の物としては造形村のSWSがあり、緻密なディティールで各部を徹底再現しているが他と比べかなりお高い。 書籍では世界の傑作機No.169で特集されているので、興味のある方はチェックしてもよいだろう。 これが傑作機なのかどうかは微妙に判断に困る気がするが… 追記・修正はソ連で戦車を吹っ飛ばしてからお願いします。 △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 [部分編集] この記事ところどころで変なところに飛ばされるな -- 名無しさん (2021-10-17 00 18 17) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/ragus/pages/405.html
ナバーチ装束 ナバーチトリコルヌ NAトリコルヌ+1 NAトリコルヌ+2 ナバーチフラック NAフラック+1 NAフラック+2 ナバーチガントリー NAガントリー+1 NAガントリー+2 ナバーチトルーズ NAトルーズ+1 NAトルーズ+2 ナバーチブーツ NAブーツ+1 NAブーツ+2 ナバーチチョーカー ナバーチマント ナバーチピアス
https://w.atwiki.jp/oreqsw/pages/1069.html
前へ モンティ「5、4、3――――スパーチャージ作戦、再始動」 腕時計の針がきっかり八時を指した途端、朝日に揺れる砂漠に轟音が響き渡る。 瞬間、慌ただしくなる指令室。無線士達の声が縦横無尽に飛んでいく。 従兵「閣下、モントゴメリー閣下!」 ぜえぜえと息を切りながら、細かい砂につっかけつっかけ、従兵が飛んでくる。 まさか不備があったのか?欧州の命運を賭けたこの戦いで、そんなことが―― モンティ「どうした、まさか不備でも―――」 従兵「違います!パットン将軍から5分早いと……」 モントゴメリーはきょとんと腕時計に一瞥くれると、呆れたように司令部へと歩いていく。 慌てたのは従兵だ。開始早々喧嘩を始められたら堪らない。急いで無線機を取ったモントゴメリーの元へと走った。 従兵「閣下、どう――――」 モンティ「パットンか?人騒がせな。お前の時計が壊れただけだ!」 ◇ ≪よう司令!聞こえてるよなァ!≫ 司令「虎か?丁度いい、今こちらに大型が1、小型が13。手が足りん」 ≪安心しな。今から突っ込む≫ 司令「……空からの支援を頼みたいんだが?」 ≪ハッハッハ!上見ろ、上!≫ けらけらと場違いな笑い声に嫌な予感が拭いきれない。 そっと野戦司令部から空を見上げると、兵士達から怒られた。 兵士a「ちょ、司令!?何してるんですか!耳塞いでください!」 兵士b「急に空なんか見てどうしたんです!まさか、ウィッチのお嬢さん達が……!?」 兵士k「そいつは……聞き捨てならねえ!!」 司令「おい、まさか……」 兵士o「何を………えっ?」 高度を下げ、白煙を引いて遠方の大型陸戦型ネウロイに突っ込む戦闘機。 見間違いようの無い黄色。そして虎印。俺専用機、タイガーバウム。 ≪30発以上は喰ったか?このまま戻って解体されて終わりってんなら―――!!≫ 司令「各員衝撃に備え!!伏せろぉぉおおお!!!」 ≪派手に散らせてェ、見送ってやらああああ!!!!≫ 稲妻よりも鮮烈に。 太陽よりも激烈に。 太陽と稲妻が一緒に落ちてきたようにブチ撒けられた黄金に司令は思わず目を覆う。 轟音が鼓膜を殴りつけ、続く衝撃波の津波に足を取られ、そのまま砂に倒れ込む。 司令「う、つぅう………状況は!?」 兵士n「っはい!大型撃破!少尉は……、パラシュートは、ありません」 戦果に声を弾ませた兵士の声が徐々に小さく、震えていく。 頭が真っ白になる。シールドも張れない、パラシュートもない。それはすなわち。 司令「あの程度に、奴が本気で、特攻したとでも?」 兵士e「あの速度で抜けだせるほうが、化物だと思うのですが……」 腹の底に氷柱を叩きこまれたように、体中から熱が消える。 動きの止まった戦場にはびゅうびゅうと熱風が走り抜け、金の粒子を落としていく。 ≪イナズマァアア………≫ だらんと垂れた無線機から流れる低音、ぐるぐる唸る虎の声。 ≪キィックゥ、オラァァァアアア!!!!≫ 急落下、爆裂。 その蹴りは、陸戦型ネウロイの装甲をいとも容易く食い破り、 衝撃波を伴って辺りの陸戦を金の炎に散らせていく。 ガラクタに成り下がった陸戦の上には一人の男。 砂埃に汚れたタンクトップに軍パン軍靴。 筋肉質な浅黒い肌に映える獣の傷跡。そして何より、ふさふさの被毛と、その身に揺らめく黄金の炎。 俺「フゥウーーッハハァ!!見たか、この一撃を!」 天に吼え、気分良さげに尻尾を揺らす虎のバケモノ、俺少尉。 兵士u「なぁにが……この一撃を!だあああ!!!」 兵士i「返せ!俺のいたいけな悲しみを!一瞬でも悲しんだ俺を返せ!!」 兵士r「いっそ死ねばよかったんだ!そしたら中尉だって開放されたのに!」 喧々囂々。 司令部へと歩く俺へと迫る兵士達。 先程までネウロイに向けられていた火炎瓶、地雷、スコップ、機関銃は一斉に敵を変えるが、 司令部に着く頃にはすっかり黙らせ、司令の出した酒をぐいっとあおった。 司令「戦況はこちらの優勢変わらず。貴様はどう見る」 俺「さあな。二日で物量の差をひっくり返しただけいいんじゃねえか?」 司令「はっはっは、さすが生態系の頂点が二人のいるだけの事はある」 俺「そう簡単に譲ってたまるかってなァ……無論、誰にも」 笑んだ口元からは想像できない程の低音で、ぼそりと呟く。 司令は一瞬、首にぞくりとしたものを感じたが、きっとそれは錯覚ではなく。 俺「整備班への連絡は任せたぜ!」 司令「おいキューベルは!?」 俺「寄り道はゆっくりするモンだ!」 豪気に言い放つと、どうと砂を巻き上げ走り出す。 黒いネウロイで染められた戦場は黄金に還り、次の戦闘に備えて防御陣地などを迅速に作り上げていく。 兵士d「司令、隣の戦区で戦闘終了だそうで」 司令「よろしい……我々も負けてはいられんな」 ぎらぎらと照りつける太陽の元、陽炎の彼方より再びの黒が砂塵を巻き上げ向かって来る。 砲手達に射撃点修正を伝えると、司令はアハトアハトの砲撃音に満足そうに頷いた。 ◇ 誘導兵を半分無視するように、滑走路に二人分の影が落ちる。 落ちる寸前、二人は手慣れたしぐさでひょいとストライカーから抜けだし、格納庫へと走る。 すれ違うように走り抜ける回収班に短く礼を言い、整備士たちの元へと向かう。 マルセイユ「すぐに出る。準備は?」 整備士6「申し訳ありません。後五分ほど……」 マルセイユ「っく、五分も待ってられるか!」 整備班長「失礼中尉。我々は無事に帰ってきてほしいのです」 ペットゲン「班長、そんな悠長なことを言っている場合じゃないんです!」 整備班長「いいからあなた達はこっち!!」 整備士と一瞬だけ目を合わせると、整備班長は二人の手を掴み、格納庫の隅に連れて行く。 班長の変態だの写真を燃やすだの、物騒なことを言いだす二人の姫をリラックスチェアに放って氷の入ったレモネードを渡し、 整備班長「今加東少佐、稲垣軍曹が向かってます。はい、レモネードを飲んだら寝てくださいね!五分もあるんですからね!」 反論も出来ないほど早口に言い切り、止める声も聞かずに走り出す。 しばらくして寝たのを確認すると、声を張り上げ、整備班全員に向かって 整備班長「いいかお前等!このまま一時間寝かせて差し上げろ!」 男としての意地。くだらないと言われようとも譲れないその心。 整備班『はいっ!!』 それはここにいる全員が同じで、ずっと心を占めていた感情。 「ッハ、相変わらずいーい心意気だなァ兄弟!」 整備班長「これしかできんからさ。お前はどうなんだ?虎よ」 俺「今すぐ出る」 ガツンと軍靴を鳴らし、背後にたたずむ大男の返答に、整備班長が頷く。 タイガーバウムの残機は残り二機。補給で届いた分も全て特攻に使ってしまった。 整備士1「タイガーバウム発進準備、すでに完了です!」 俺「さすがだ。そういや何時間休ませるんだ?」 空の酒瓶を木箱に置き、タイガーバウムに駆け上がる。 俺はちらと格納庫の隅を見、そのまま整備班長を見た。 整備班長「一時間だ。さすがにそれ以上は――――」 不可能。むしろ休ませる事自体がありえない。 優勢はこちらだが戦う時間が長過ぎた。しかし、スカーフをなびかす虎は吼える。 俺「オウオウオウ、小せぇ男だなァ班長よ!」 整備班長「ッ仕方ねえだろうが!この空を!三人だけで守れるか!?」 俺「三時間だ。今の内にカトーとマミ、マイルズ達も下がらせとけ」 エンジンの轟音が格納庫を震わせる。 無茶に決まってる。広大なアフリカを一人で、それも空と陸を守ろうというのだから。 眉間に皺を寄せ、俺を見上げる。 ちょうど逆光となって輝く光彩。狙いを定められたような眼光に腹が冷える。 笑いは敵意の表れだというのに。 虎の癖に牙を剥き、それを笑いとする俺は、どっちなんだろうか。 見えないが俺は笑っているのだろう。いつもと同じ自信と誇りと、何より楽しさを満たし、牙を剥いて。 整備班長「…その笑いはな、誇り高く自由を生きた奴しかできねえ笑いだ」 俺「へぇ、随分と面白ェこと言うじゃねえか」 俺の爺さんと同じ、全てを楽しんだ人間のな。 そしてウィッチ達が浮かべる笑顔と同じ、眩しくて仕方の無いもの。 大きく息を吸い込み、右手を額に寄せる。 整備班長「……任せた!!」 俺「応、任された!!」 ◇ 無線士a「ミデイリヤB戦区にて敵ネウロイ撤退!」 無線士b「閣下、ルワイサットA戦区もです!」 忙しなく入る報告を地図へと書き付ける。 昨日昼には物量差逆転。今朝には占領陣地逆転。そして今は完璧に攻勢へとまわった。 作戦開始より二日にして、すでに流れはこちらに変った。 モンティ(ここを勝てば後の作戦へと繋がる……よく、この少数で) はたと、手を止める。 アラムハルファ戦区からの報告が入っていない。 あのパットンが戦果の報告を怠るなんぞありえないし、なにより 無線士c「閣下、閣下、アラムハルファにて……」 赤かった顔を青く変えた無線士が雄弁に語っている。 連絡が取れないという事は、あれだけの人数で対応しきれない事態が発生したという事で。 それはすなわち、異常事態。もしかしたら、もう全滅しているのかも―― 無線士c「パットン将軍受持区より、連絡が…」 通信機へと走った。 呼びかける。反応無し。手は震え、ザラザラと耳障りな和音が頭蓋に響く。 モンティ「パットン!おいパットン応答しないか!!」 ≪ガ……ガッガザー…ッザザッザーーー…………≫ モンティ「おい!!返事を――――」 ≪静かにしねぇかモンティ!≫ モンティ「…ッ馬鹿者!非常時に割り込むでないわ!!」 モントゴメリーは一瞬目を見開いて怒鳴り返す。 ぎゅうと通信機を持つ手に力が籠った。 ≪今パットンの方に向かってる!しっかしなんだありゃあ……≫ モンティ「何だ?何か見えるのか?」 俺「……クジラ…なのか…?」 風に乗る黒。辺り一面を滞留する霧の向こうより、赤い光がこちらを向く。 それは霧に己の巨影を映し、太陽を呑みこんだ。 地球上全生物中最も大質量を誇る生物。 海に座す筈の巨体。鯨。ソレはちょうどそれに似たネウロイ。 鯨皮とも装甲ともつかない外皮の隙間には所狭しと赤い線が。 呼吸だろうか、一定のリズムで光を放ちながら走っていた。 がふぉお、と馬鹿でかい口が開く。 口から、外皮の隙間から、大量の霧がもったりと落ち、更に霧が濃くなっていく。 コレは危険だと。脳漿の奥から、胸の底から、本能が警鐘を鳴らす。 俺「新型……ハッハー、モンティ!鯨だ!陸に鯨が揚がってやがる!!」 ◇ モンティ「鯨、だと?」 ≪おうとも!馬鹿みてェにでけえ!戦艦なんて越えんじゃねえか?≫ ここにきてアンノウンの確認?まさか温存していたとでも……どこまでも忌々しい鉄クズ共が。 無線越しの馬鹿笑いが大きくなる。 こんな時まで笑うかと頭の片隅で思うが振り払い、救援を出そうと計器に手をかけると、 ≪よくも寝かせてくれたわね、この馬鹿虎!勲章でもあげたいくらい!≫ 加東の怒声と雑音の嵐。モントゴメリーは息をついた。 ≪そりゃどうも!…ッハァ、子機まで出しやがる!空母かよコイツは!!≫ モンティ「何だと!?……ネウロイが、奴等が進化したとでも?」 自然と出た言葉に驚いたのはモントゴメリーの方だった。 俺は何も言わない。加東の方からの雑音が止んだ。 ≪…ウィッチ隊の出撃、構いませんね!≫ モンティ「一向に構わん!回収班も出す!急げ!」 唐突に静寂が訪れる。 あの晩、万策尽きたと嘆いた時と同じ静寂。虫唾が走ると、モントゴメリーは居住まいを正す。 すでに他戦区での戦闘は数えるばかり。勝利は掴んだようなもの。 回収には残存部隊をほとんど向かわせた。もうじき作戦は終わる。 だが、考えれば考える程に全てが霧散していく。何だというんだこの 観測班「閣下、ご報告が」 寒気は。 ◇ 一気に高度を下げ、眼下の黒鯨を目指す。 黒鯨は緩慢な動作で頭を上げると、戦艦すらも丸飲みしそうな口を開いた。 奥に光る真っ赤な塊。 心臓はここだとばかりに、黒鯨は自らのコアを虎に晒す。 降下しながら虎は笑う。それはいつかの少女とそっくりで、まるでいつもの遊びのようで、 俺「鯨如きが俺と遊ぼうってのかァ!?っくぅ…面白ェッ骨の髄まで喰い千切ってやるよォオ!!」 ≪ちったあ静かにやりなさい!っこの、堅い!≫ ≪退け、ライーサ!次のはちょっときつい!≫ ≪はい!≫ 真っ赤な海嘯が辺り一面を呑みこんでいく。 マルセイユの咄嗟の判断で稲垣のいる後方まで退避したライーサは、その赤さに息を飲んだ。 残りの弾数だとか、人員への負担だとか。そんなものを一切考える必要が無い力任せのゴリ押し。 しかも辺り一面に漂う霧で、遠くからだと何が何だか分かりやしない。ついでに光までもが遮られている薄暗い空間。 マイルズ「まるで海の中ね」 ぼんやりとかすむ空を見上げて映る色は赤と黒。そして金色。 近付いて撃ち込むが装甲は剥がれず、パラパラと石灰のような欠片が舞うばかり。 マイルズ隊1「…心持ち体の動きも鈍い感じですしね。なにか絡み付いてるみたいで」 シャーロット「重いしダルイ……私、クジラなんて初めて見た」 アビゲイル「デカイだけならいいのよ。それだけならね」 後方では回収班達が倒れている兵士を車両に詰め込んでいる。 陣形を取って攻撃するが、やはり黒鯨は陸には攻撃を加えてこなかった。その上を飛ぶ子機も同様に。 空で上手く誘っているからだろうと飲み下し、近くに倒れるパットンの元へと駆ける。 マリリン「親父、生きてる!?」 パットン「っは……エンジェルちゃん達をおいて、死ねるか…」 マリリン「余裕そうで安心よ。何があったの?こんなの見たことも無い……」 見上げるばかりの黒。 いつもの熱風と違う、張りつくような重い風。 そう思っているだけかもしれない。だが、確かにそう思うのだ。 パットン「退け…これは、攻撃ではない」 ◇ 俺「四機目ェ!!おう、何機落とした!?」 ≪二―――三機目!!≫ 俺「ハッ、俺の勝ちだな!」 迫り来る赤い海嘯をロールの連続で避け、黒鯨の頭部を目指す。 金色の弾丸を尾鰭から頭までに叩き込めば、黒鯨は地鳴りのような呻き声をあげて身をよじる。 ≪コイツ自体は随分とろいじゃないか≫ マルセイユは空いたマガジンを放り、余裕そうに笑う。 黒鯨は、まるで氷河の流れのように雄大なゆっくりとした動きで、もくもくと霧を吐き続ける。 俺「おうよ。あくびが出ちまう」 不愉快な喚き声をたてた割に、今だ止まない侵攻の気配には笑いすら込み上げてくる。 再び高度を取り、マルセイユと視線を交わすと一気に空間を詰める。 加東やペットゲン達の何か叫ぶような声を背に、自ら黒鯨の最大の攻撃である赤い海嘯の始まりに飛び込む二人。 俺「いーい波が来やがった!ハンナ、引き返してもいいんだぜ!!?」 ≪これを試さず帰ったら、私は私を許せない!乗るぞ!!≫ 俺「ッハ、それでこそお前だ!行くぞ……テイクオフ!!」 マルセイユの割と本気な声と共に、巨大な真紅の壁を滑翔する彼等はまるで小さな点だ。 どんどん降りていって下に付けた辺りで、波頭が落ちてきた。チューブの底から、まだ彼等は落ちてこない。 迫る迫る。波の終わりが背後に迫る。隙間に逃れることも出来た。だがそこに抜けたら、全てが終わる気がした。 ≪失敗したらどうする?≫ 死出に誘う真紅の間近を器用にバランスを取って飛びながら、マルセイユは殊勝な顔をして言う。 後ろの方から子機が一、二の気配がしていた。 すぐ傍まで迫る命を壊す音に迷いもせず飛び込んだ馬鹿は、考えもしなかった。そんな顔をして 俺「俺を信じろ」 活発に笑った。 マルセイユ「…言うと思った」 真紅の海嘯の起こす獰猛な気流の波を思い切り飛ぶ。後ろの子機は呑まれて消えた。 チューブの向こうで黒鯨は嗤う。大口を開いて赤い塊を見せて、これ見よがしに閃光を放つ。 だが、貴様、敵が何かを忘れたか。 運命とは不思議なもので、流れに任せるだけではいつの間にか消えてしまう。 そんな運命の土壇場で、己の力で流れを捻じ曲げられた者だけが生き残ると、誰かは言った。 俺「丸見えだぜェ大馬鹿野郎!!!」 まんまるの瞳孔に黒鯨のコアを映し、僅かに機首を上げる。 マルセイユ「怯えて生きるのは趣味じゃないんだ」 チューブ状の逃げ場の無い、崩れる波の中に放たれた光の束を流れるように避ける。 まるでそれを知っていたかのように、易々と。 まったくもって規格外。人間には何が可能かという概念を根底から完全に覆すその二人。 黒鯨はますます笑みを深めた。 ぞり、と。 黒鯨の上顎を抉ったのは、15と5つの弾丸。 5はそれだけで砲弾のような力をもって突き刺さり、 残りの15は白い欠片が噴き出す弾痕を指向的に、見事に集中して撃ち込まれ――― マルセイユ「っ、化物め……!」 見る見るうちに抉られた表皮が元に戻る。 形容できないうえにしたくもない、ごきごきだとか、みしょりだとかの音を立てて一斉に。 白く窪んだ中に赤く光るコアも、一瞬にして黒の鯨皮の底にしまわれてしまう。 俺は怪訝そうに眉を顰めた。どうにも見覚えがあるこの馬鹿げた再生力―――― 加東「無茶するなって言ってんでしょうが!!」 マルセイユ「ちょっと波に乗っただけさ。いい戦法だと思ったんだけどな…」 加東「…こっちの心臓が持たないわよ」 ≪おうおう、アフリカのボスたるカトーが、そんなノミの心臓でいいのか?≫ 加東「あなた達の心臓と比べるな!」 黒鯨の全貌が見渡せるほどの上空で、軽口を叩き合って三人は笑う。 だが、タイガーバウムの風防を殴りつけながら、加東は焦っていた。 あまりに規格外。圧倒的にも程がある生産力、再生力、そしてその進化。 自己再生・自己進化・自己増殖。ネウロイが単体で全てを行う。 全生物が進化の果て。それがこの黒鯨だとすれば、 人類とは一体何なのだ。まるでこちらが害悪の根源で、まるであちらが、生き残るべき対象じゃないか。 まるで定めとも言うべきそれは、音も立てずに希望を殺した。 ≪カトー≫ 風防に押し付けたまま震える拳を、俺が内側から触れる。 ≪安心しろ。俺達に出来無い事はねえ≫ 俺の口の動きと、僅かに遅れる無線の声。 目を瞬いて俺をまっすぐ見ると、反対側の風防。そこに両肘をついたマルセイユがニッと笑った。 マルセイユ「そういう事だケイ。諦めるんだな」 卑怯だ、と。 この局面で命を掛けた手すら封じられたというのに。 希望すら見いだせない程の靄の中だというのに。 加東「あなた達ねえ……」 ≪おっと、賭けるはいいが保証はしないぜ?俺は大博打しか興味がねえ≫ にんまりと、イタズラを考える子供そのものの顔で。 マルセイユ「ばか。手の内は?」 ≪アハトアハトをブチかます≫ 加東「決定。今月の給料全部賭けてやるわ」 ≪ヒュウ!良い勝負師っぷりだ!≫ マルセイユ「そうと決まれば呼ぶだけだな。マミ!」 ◇ ライーサ「……回収班、地上主力部隊以外の撤退を確認。終わり、かな」 荒涼とした沙漠を見降ろし、ぽつりと呟く。 寂しさか、安らぎか。 恐らく両方の混ざった格好で、更に上の三人を見上げた。 ライーサ「よし、マミ!ティナ達が待ってるから――――マミ?」 いつまで経っても来ない返事に後ろを向いた。 稲垣「…っ、らいーさ、目が…かすんで……」 ◇ 瘴気が人体に与える影響は五段階に分けられる。 第一段階における人体への影響は手足のしびれ、震え。 (一般的な兵士の教育課程においては、この症状が確認された時点で撤退が許可される) 第二段階においては咳、軽度の意識混濁。眠気。 第三段階においては重度の呼吸困難、意識混濁。急激な眠気。この時点に置いて手足の自由はすでになくなる。 第四段階においては意識不明。そして内臓機能の低下。 第五段階において、人体の生存機能は完全に停止。死に至る。 ウィッチは魔法障壁に体が守られているため、これら瘴気の影響を受けない。 しかし、それは濃度の基準が今までの基準ならばの話である。 観測班2「瘴気濃度急激に上昇……ッ更なる上昇を確認!」 観測班3「瘴気、濃度基準値を突破!…なんだこれ、瘴気濃度、これまでの基準を大幅に上回ります!」 目紛るしく動き回る人。 目紛るしく変わった戦況。 モントゴメリーは動けずにいた。入る情報の全てが信じられなかった。 考えてはいた。ただ、追い付かないだけで。 観測班1「――統計出ました。現在新型ネウロイを中心とした半径10km以内においての瘴気濃度、ネウロイの巣周辺を上回りました!」 観測班6「まっすぐこちらに向かっています……まさか、海を越える?」 観測班5「範囲的に見て瘴気濃度上昇開始は20分前。丁度、あのクジラの発生時刻と重なります」 観測班3「報告によれば、アハトアハトすら貫通せず、俺少尉とマルセイユ中尉の突撃後も、すぐに再生したと……もう、手が………」 言いかけて口を噤む。 頼みのアハトアハトすら通らなかった。そしてあの二人の突撃も。そして、瘴気までもが行く手を阻む。 大判の地図には針路、風向き、地形図からの地形から計算された範囲が書き込まれ続ける。 観測班2「マイルズ隊の回収した計測機は754ppmを観測……これはもう、人の生きられるものではありません」 観測班4「…閣下、これは人類が観測した濃度を大幅に……この数値は、ウィッチにも影響が出る範囲だと推測します」 モントゴメリーは考える。 人と、勝利と、どちらを取るべきかを。 どちらが、人類を繋げるかと。 モンティ「撤退する」 それは、静まり返る司令室に嫌に響き、 無線士a「閣下、それは……」 異論を許さないほど厳しく。 それからの行動は全てが迅速で、まるで自分がやっているとは思えないくらい他人事だった。 モンティ「至急本部へと知らせろ。アフリカにて新型ネウロイ発生。撤退許可を願うと」 恐ろしい位にモントゴメリーは冷静に言う。 兵士達の症状は第三段階まできているとの報告だった。 そして、ウィッチにも第一段階の症状が見られると、軍医は言った。 モンティ「出来る限りの最新を伝えてくれ。残存ウィッチ隊には早く帰るように」 刃は通らず、人も寄せず、ウィッチすら近付けず。 そうして導き出される答えは敗北の文字。 圧倒的“一”を上回る、更なる“一” まさに進化という言葉の相応しいとおりに、ネウロイは己を変化させた。 より強烈な瘴気を。 より強力な火砲を。 より強靭な体躯を。 そして、なにもかもが人類を上回る形を以て。 抵抗の一手も許さない圧倒的恐怖と絶対的絶望を前に、ヒトはただ脅え、僅かに抗うのが精一杯。 用意されていたような最悪のシナリオで現れた黒鯨は、力を寄こせば更なる力で返し、いとも容易く人類の抗う心を砕いてくれた。 覆らない差。進化の果てと進歩の果て。 彼奴等は人類の敗北を土産に頂点に君臨するのか? これが運命というならば、主よ、我等を見捨てたか。 ◇ マリリン「…少佐」 マイルズ「撤退よ」 無線機をかちりと置いてマイルズが告げたのは、一時撤退せよとの知らせだった。 詳細は告げられなかったが、嫌でも原因は目に入る。何度も何度も爆発音が響いたが、終ぞ黒鯨が止まることは無かった。 シャーロット「……そんな、嫌です!まだやれる!」 教育課程で習った事が正しければ、パットン等の症状は瘴気によるものだ。 そして、計器を持ち帰らせた少女達に出ていた症状も身に覚えがあった。 曲がりなりにもマイルズは隊長だ。隊員達の不調はすぐに見える。 先程からシャーロットのトリガーを握る手が微かに震えていることも。すべて。 マイルズ「……虎、聞こえてたでしょう?」 インカムを指ではじき、呟く。 最後まで虎と呼んだのは少しの強がりかもしれない。 ≪任せろ。好きにしな≫ マイルズ「ありがとう…」 ≪ハッ、俺を誰だと思ってやがる≫ マイルズ「…最高に良い男よ。惚れちゃいそうなくらい」 ≪ワオ、戦場の色恋は隙だぜ?≫ マイルズ「…分かってる。また、基地で」 ≪ああ、またな!≫ しん、と静寂が帰る。 聞こえてくるのは、空高くの黒鯨が霧を吐きだす音と、駆動する歪な音だけ。 マイルズはその空を見上げると、ぐいっと頬を拭った。 マイルズ「いい?さっさと帰ってネズミ野郎を張っ倒すわよ!……返事!!」 全員『――了解!!』 ◇ 俺「ネウロイの活動が活発になる状況は一つ。瘴気に侵された土地だ」 オストマルク、カールスラントで確認されたネウロイの生体情報。 瘴気はすなわちエーテルのようなもので、ネウロイにとっては常に存在するもので、 彼等の侵攻の後に瘴気が溜まるのは必然であり、エーテルとの関係性が云々。 つまり、ネウロイは瘴気を振り撒く事によって自身の生体活動の活性化、簡単にいえば己の過ごしやすい環境に変えている。 正しいかどうかは知れた事。すでに黒鯨がその身を以て証明し、それを目の当たりにしたばかり。 ネウロイの侵攻を受けた土地のやたら靄がかかった様、それが目視できる程の瘴気だとすれば、 黒鯨の吐き出し続ける霧は、瘴気と考えるのが普通だろう。 ≪それなら全て合点だわ。でもどうして?≫ 俺「知るかよ、勘だ。さあ、嬢ちゃん達が退くまでの時間は作れる。行けよ」 お世辞にも優しいとは言えない声は、また時間を作るという。 ≪障壁も張れないあなたこそ、いの一番に戻るべきだと思うんだけど?≫ 俺「安心しろ、風防がある。それに呼吸器もあるからな」 ≪……分かった≫ そんな風に大丈夫しか言わないから心配になるというのに。 でもここで引かなければまた無茶を言いだすに違いないと、加東は頷いた。大人の対応だった。 無論彼女にも分かっている。 俺の言っている事が矛盾だらけだという事くらい。 ただ、この中で一番体力が残っていて一番生存率の高いエースには死の臭いがしないだけに、 その背中に頼ってしまう成り行きに無力さを感じているだけで。 はたして、いつも心配されているのは自分自身の事なのだと、この虎は気付いているのだろうか。 ≪私はまだ戦える。ケイ、二人を連れて先に行ってくれ≫ ………………。 はいそうですかと、すぐに首を縦に振る程、アフリカの星は無責任ではなかったようだ。 何だかくらくらするようで、加東が口を開きかけた所で、手を置いていた風防が開いたので、彼女は慌てて手を退けた。 マルセイユ「ば、ばか!瘴気が――――」 俺「これ位何ともねえよ。なんだ、俺が信じられねえってか?」 マルセイユ「違う、そうやっていつも無茶をするから!」 俺「これしか知らねぇんだ。それに、守り切れない」 ずくり、と。 氷でできたナイフで刺されたような痛みがじわじわとマルセイユの胸に広がる。 その傷は熱を持ち、じくじくと血が滲みそうに疼いた。 俺「それとも、お姫様はキスをお望みで?」 マルセイユ「…冗談は基地に帰ってから聞く。この馬鹿野郎」 手持ちのMG34を振りかぶり、思いっ切り俺の頭を狙ってやった。 色々と間違った対応だが、虎はがっしと片手で受け止める。 マルセイユ「競技用の銃で死なれたら困るからな」 照れ隠しとは程遠い口上でマガジンを操縦席の後ろに入れる。 一通りの武器をタイガーバウムに押し込むと、彼女は満足そうに笑った。 マルセイユ「俺、私が勝つまで死ぬなよ?」 俺「ハッ、こっちの台詞だ」 風防を閉めて親指を立てると、俺はぎゅんと黒鯨の撹乱に飛ぶ。 辛そうな稲垣の手を曳き、彼女等がある程度の距離を取った所で、 俺「…一つ、試すか」 赤く染まる景色が黄金の光彩に映った。 抑える力は使い果たした。金色が笑う。 一瞬ちらりと頭をよぎった彼は、ざわざわと黄金を這いずらせる。 力のままに迫り来る赤い海嘯を一息に見切ると、 虎はそのまま黒鯨の上顎に突っ込んだ。 オオオォオオ、と。 残響を引きずる咆哮が黄金色に染まる世界に満ちる。 加東「…また、使ったのね」 超視力の先に、急に動きが鋭くなった彼の機体が見えた。 あの時と同じ、限界を超えた動き。隠していたんだろうが、あの時の通信は筒抜けだった。 全てが金色に染まる。霧の海すら埋める輝きから、彼女は目を背けた。 そうして基地に戻って程無くして、機体を失った俺は走って帰って来た。 基地に着いた途端、糸が切れたように倒れ、そのまま医務室へと運ばれた。 ロンメルが帰ったのはその少し後。 アフリカ行きの船の途中で受け取った連合軍本部からの封筒が、嫌な緊張を醸し出していた。 そして今。 司令部の卓には前回の集まりと同じように、三将軍と佐官が集まっていた。 ロンメル「…全員、いるな」 黒鯨の動きは俺の特攻じみた突撃で止まっている。どうやら上顎を吹き飛ばしたらしい。 本部に伝えられた情報はすでに全員に伝わり、その静寂は痛いようで、少しの望みを流していた。 俺「よう、今帰ったのか」 加東「俺?あなた瘴気で……」 医務室で寝ているはずの俺に加東が声をあげる。 彼女が見に行った時よりも顔色は多少――ほとんど元に戻っている俺は、何の躊躇も無く卓へと歩いた。 俺「何ともねえさ………で、ロンメル。何を持ってきた?」 金色の瞳がロンメルに向いた。 射ぬかれるような鋭さに、気付いている、と。封筒を持つロンメルの手が微かに震える。 ロンメル「…18時だ。開封する」 かしゃかしゃと紙の擦れる音がして、口を裂かれた封筒から書状が落ちる。 それを広げたロンメルの厳格なまでに顰められた表情が、内容を告げているようだった。 ロンメルは頭の中で数回復唱すると、形式的な部分を省き、簡潔に言った。 ロンメル「我々統合連合軍は現時刻を持ってアフリカの放棄を決定した。……総撤退、急げ」 ――新型ネウロイとの交戦は不可能と判断し、アフリカ部隊には直ちにアフリカを放棄し、東部戦線への参戦を望む。 尚、この件についての他言は一切の禁止を命ずる。と 佐官「……そんな、馬鹿な」 嘘だと思いたいくらいの内容で。 でも、その書状の一番下の『ドワイト・D・アイゼンハワー』のサインが真実だと。 告げられる内容の半分以上が耳から抜ける。 ロンメル「明朝に出港する。各自大切な物、各班は必要最小限の荷を今の内に積んでおけ」 無駄なものが一切無い、切っ先のような言葉。 踵を返して去る将軍達は研ぎ澄まされた業物のようで、残された佐官達はナマクラのように佇んだまま。 そんな、ゆったりと虚無が抜ける中、加東は気付いた。 俺が、どこにもいない事に。 帳は落ち切り、息は白く。満月だけが大向こうに座す沙漠にて。 熱を帯びた騒がしさは消え、風に乗るのは痛みに唸る黒鯨の音ばかり。 格納庫には誰もいない。何時になく綺麗に掃除された床には、月光が白と黒の鮮やかな模様を描いていた。 そんな中、軍靴の音が響く。 そのまま軍靴は、影に並ぶストライカーへと歩みを進めた。 一列に並んだストライカーには丁寧に幌が被せられ、荷の順番か、朝早くにでも積むのだろう。 端に寄せられた一回り大きなストライカー。それを一度だけ撫で、目的の機体の元へと向かった。 切って落とせそうなほどの静寂の中、ゆっくりと目の前の幌に手をかけ、剥ぎ取――― ttp //www.youtube.com/watch?v=0V7aUT13qtM 「何をしているのかしら?」 俺「…デートの用意さ。見れば分かるだろ?カトー」 加東「ふざけるな!自分が何をしているか分かってるの!?」 息を切らせ、影から出た加東は、月明かりを挟んだ向こうの虎に叫ぶ。 俺「俺の魔法を忘れたか?『攻撃特化』――唯一無二にして、最高の作戦だと思うんだがなァ…」 そう言うと、虎はくるりと加東に向き直る。 暗闇に輝く黄金の二対。姿の見えないほどの闇の中で異様に輝く金色。 人の目は光らない。だとすれば、光る方法は使い魔を発現させた時だけ―― 加東「まさ、か」 力の開放。 彼の虎エルドラドと無理矢理に命を繋ぎ、驚異的な感覚、力を得ると同時に、 やがて自身の全ての機能を使い果たし、苦痛と倦怠の中で死に至る魔法。 表面を教えられた程度だが、その後を知る加東にとって、それはこの男を張り倒してでも止めなければならない事態だった。 そしてこれは、加東の数える内では三回目。いくら偶然が重なったとはいえ、擦り切れてしまうのは目に見えていた。 俺「使っている間は苦しくねえ。傷も治れば魔法力だって溢れて来る。何でも聞こえる、どこまでも行ける」 そう言ってごろごろと喉を鳴らす。 真っ白な牙が月光を反しててらてら光るのが恐ろしかった。 なにより、この場に満ちる気配に獲り殺されそうで怖かった。 俺「安心しな。ちょちょいと奴に突っ込んで来るだけだ」 加東「……死ぬ気?」 やっとの思いで絞り出した声は頼りなく、届いたことさえ怪しいもので。 ――忘れていたんだ、この感覚を。いつから自分は安心していたんだろうか。 相手は虎だった。一瞬目を見開くと、ぐるりと笑う声がした。 俺「なぁに、突っ込むのは慣れてる。……まァ、今回ばっかりは俺が先に昇天しちまいそうだがな」 加東「ふッざけるな!知ってる?人はそれを―――――」 「無謀と呼ぶ。そうだろう、加東君」 軍靴の音が反響する。 声の主だけではなく、土砂降りのような音が溢れかえった。 俺「オイオイオイ、この程度で止めようってのか?パットン、ロンメル、モントゴメリー…いや、お前等。俺を舐めてんのか?」 ずらりと並んだ兵士を光る目がなぞる。 拍子抜けだと言わんばかりの詰まらなそうな声で、影に潜む虎は笑った。 パットン「退け。今回ばかりは容赦せんぞ」 俺「要はあのクジラ野郎が問題なんだろ?気にすんなよ。俺一人でやってやる」 モンティ「『虎のある所負け無し』は終わったんだ。現在に過去は通用しない」 俺「……………」 ロンメル「これはアイクからの命令だ。東部は非常に切迫している。ここに手を掛ける暇など無い いいか俺。自分が何かを考えろ。欧州を一人で飛び、幾多の戦区を救った英雄が、ここでモタモタしている暇は無い」 すでにアフリカ部隊の進む道も決まっている。 西部戦線の援護をしながら北上。その後東部戦線『オペレーション・ウラヌス』に参加。 アフリカは捨てるに惜しいが、扶桑からの輸送は今のままで間に合っている。 ……それが上層部の言い訳だった。恐るべき進化を目の当たりにして、彼等は己の保身を選んだ。 考えないのが兵士、考えないのが道具。良く砥がれたナイフは主の思うままに獲物を切り裂く。所詮、軍人はそんなもの。 パットン「いい加減諦めろ。ここが儂等の、お前の限界だ」 聞かないのなら、お前を殺すまで。 数多の銃口が虎を狙うのが分かった。向ける人間の顔に浮かぶのは葛藤、苦痛、同情…数えきれる筈が無い。 正しいか。 そんなものは知らない。これは命令なのだから。 その先にあるものも何もかも、試す必要も無いのだから―― 俺「王様気分でご命令か?……テメエで俺を測るなよ」 加東「え……」 予想だにしない、凄まじい無茶無謀。 パットン「……粋がるのもいい加減にしろよ野良が!いつでも殺せるんだぞ!」 何が故に叫ぶ。 誰が為に吼える。 地位も名誉も金も、全てが約束されたのに。 己が命を晒してまで、何がお前を駆り立てる。 お前は、何を求める 俺「それともお前等は!知らねえ奴の言った事をハイそうですかって信じられんのか!?…ハッ、俺はゴメンだね 負けを認めろ?ふざけんな!! 俺は俺の信じる道を行く!俺が俺を信じられる道を行く! 力は力で捻じ伏せりゃあいい!俺の道をふさぐ奴ァ何だろうとブン殴って黙らせる!! …さあコイツが最後だ。撃たねえなら退け、俺より弱ェ奴は道を開けろォ!!」 それは、自分勝手で傲慢な、どこまでも子供じみた言葉。 自由に誇り高く――ひょっとしたら、こいつなら何とかなるかもしれないといった、漠然とした希望。 考えて、思う。 動きたくても動けない現状に自分を満足させて、自分は動かないだけだと―― 俺「そうやって逃げて、羊として生きるんだったら、俺は虎として死ぬ」 そう言って背を向け、幌を横凪ぎにさらって投げ捨てて。 誰もが黙った静けさを、たんと踏みだすその時に。 たん、と一つ。銃声が大気を切り落とす。 「止まらないと撃つ」 空薬莢がかりんと落ちて。 空っぽの弾倉を捨てて、新しい弾倉をグリップ内に押し込む。 かしゃりと初弾を装填すると、戸惑うこと無く銃口を向けた。 マルセイユ「次は心臓だ」 月に明かされた白の床を、ただ、進み。 俺も、待っていたかのように黒い影から出で。 俺「遅かったじゃねえか、ハンナ」 まるで遠く離れた恋人と再会したような、声と仕草で、俺は銃を抜いた。 マルセイユ「何を抜け抜けと」 やがて、互いの手が触れるか少しの距離で足を止めて。 ちぐはぐな距離で真っ向から視線を絡ませて。 俺「退けよ」 マルセイユ「はん、断る」 俺「そうか。残念だ」 かつて、背中を預け合った好敵手は、互いに銃を向ける。 マルセイユは手を伸ばして心臓を、俺はまっすぐにその眉間を。 そして、そのままたっぷり続いた静寂を、破ったのは俺の咆哮だった。 俺「退けと言っている!ハンナ・ユスティーナ・マルセイユ!!」 マルセイユ「いやだ!」 俺「…お前程のいい女を殺すのは忍びねえが………まあ、それもいい」 月に姿を明かされた大鷲の照星は虎の心臓を狙う。 奈落に潜んだ虎は眩しそうに目を細め、牙を剥く。 月下、二人は相対す 俺「サヨナラだ」 前へ ページ先頭へ